1割未満の時間と、9割以上の時間


168時間...。
時間に換算すると、一週間は168時間です。

病院勤務だろうが、訪問リハビリだろうが、
OTとして、実際に僕らが利用者さんに関われるのは、
そのうちの、僅か数十分~数時間。

残りの9割以上の時間は、
ご本人と、それを支えるご家族の時間です。

『リハビリを始めたお蔭で、歩く時の膝の痛みが楽になりました。』
『今まで移乗に苦労していたけど、楽に介助ができるようになった。』
『自分で動きたいという気持ちになってくれた。』

そんな言葉を、
担当の看護師やご家族、ご本人などから頂きます。

素直に嬉しいけれど、僕らはこれを勘違いしてはいけない。

なぜなら僕らは、
利用者さん自身に元々無いものを、新しく生み出すことはできないのだから。

僕らに出来ることは、
利用者さんの持っているものを引き出すための、
その切っ掛けを作り出すということ。

そして、その切っ掛けを上手く提示することによって、
残りの9割以上の時間が、変わっていくことがある。

これは紛れもない事実なんだけれど、
反対に、僕らの関わった時間が1割にも満たないというのも、また事実。
僕ら一人一人は、これをどう捉えるか。

『リハビリのお蔭で助かりました...』
『リハビリの先生が頑張って指導してくれたから...』
ご家族やご本人が、そう思って下さるのはいいことです。

けれど、
僕らがその言葉を過剰に評価して受け取って、勘違いをしてはいけないと思う。

もし、『頑張れた』のであれば、
それは、9割以上を占める時間の中で起こったことかもしれないし、
頑張ったこと自体、紛れもなくご家族やご本人であって、僕らではないのだから。


他人である僕らが忘れてはならないことは、
どんなに綺麗ごとを並べてみても、僕らはリハビリを提供した後、
時間が来ると、いつでもさよならできる立場にいるということ、

一方、
ご家族やご本人には、10年も20年もその先の時間があるということで、
両者の間にあるその違いは、
どうしても乗り越えることができないものなのです。

それに僕がもし、患者や利用者の立場だったら、
毎日毎日、頑張り続けることなんてできない。

本当に教えてほしいのは、短期間に頑張ってできることと、
10年、20年と続けられるような身体の使い方、生活の仕方、
その両方だと思う。

共に頑張れる時間と、
あなたがいなくても、続けていくことができる時間。

それは、1割未満の時間と、9割以上の時間。
そして、支援の時間と、自律の時間。

その二つの時間があることを無視して、僕には、
『とにかく、これから頑張ってリハビリすれば良くなります。』
なんていう言葉を、気安く使うことはできない。

在宅生活は、
リハビリで頑張れば良くなりますというほど、単純なものではないし、
リハビリの時間で頑張ることだけが、万能薬になるということでもない。

僕らが関わり共に頑張れる時間と、それ以外の時間。
その二つの時間を継続できることで、在宅生活は成り立つのだから、
感謝の言葉を頂いても、そのことは忘れてはいけないと思う。

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by hiro-ito55 | 2013-04-14 18:23 | 作業療法

作業療法士です。日頃考えていることを綴ります


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