守破離と、世界を見渡すこと


主に、
伝統技術や、芸術の分野に携わる方などの間で使わる言葉の中に、
守破離というものがあります。

どんなものでも、
伝えられた技術や技を、そっくりそのまま弟子や教え子が守ることで、
ひとつの型ができていくもので、

その同じ型は、
何度も何度も繰り返し模倣されていくうちに、
まるで所作のひとつのような、自然な型となって馴染んでいきます。

技術や技を引き継ぐ人には、
ひとつのことを繰り返し守ることによって、
ここはこうした方がいいのではないか、ああした方がいいのではないか
という自然な気付きも生まれてきます。

そしてその気付きによって、
守ってきた型を少しずつ破り、合わなければ戻り、また少し破ってみる...。
そういった反復行動が生まれてきます。

そして、そのような試行錯誤を何度も繰り返すうちに、
元あった型から、少しずつ離れることができる
のです。

このような流れを、守破離と言うのですが、
もちろん、全ての技術や技が、守破離の過程を辿れるわけではなく、
『守』だけで終わってしまうものもあります

しかし、
どんな技術にしろ芸術にしろ、
それを継承し、生き残らせていくためには、
このような型の変化の流れは、欠かせないものでしょう。


技術や芸術の世界だけでなく、僕らが生きる一般社会においても、
一見すると、一足飛びにして辿り着いたように見えるアイデアでさえ、

良いアイデアというものは、たとえ体系化・言語化されていないものでも
必ずその論拠や土台となるものが背景にあり、
且つ、しっかりと根を下ろして存在しているもの
です。

例えばブレイクスルーとは、
一か八かの思考の大ジャンプによって齎されるのではなく

そういう気付きに立ち会う瞬間が、
守破離という過程を土台にして齎されるものであると、
個人的には考えています。


仕事にしろ、趣味にしろ、ひとつの物事を追求すればするほど
今まで目の前にある木一本を見ていればよかったものが、
あたかも森の中に分け入って、森の中から全体を探るような、

そんな、
物事の奥深さに触れる瞬間を、体験することがあります

そしてそれは同時に、
全体から見れば、自分のちっぽけさを確認させられる瞬間でもある筈です。

迷路とも広がりとも、
或いは、閉塞感とも可能性とも呼べるようなものかもしれませんが、

そこに迷い込んだとき、
最後は誰も、自分流に信じるしか、他に道がないように思います。

自分流に信じるとは、
信じたものに自分自身が責任を持てるということです。

自分で責任を持てる選択だけが、本当の自由であり
本当に知るということは、自分を信じることでもあるということ

そして、
土台や論拠がしっかりとしていなければ、
しっかりと信じること、責任を持つことも、
自由に発想することも、できません


本当の自由、自分を信じること、
信じたものに自分自身が責任を持てること


その土台となるのはやはり、
守破離という知の捉え方であると思います。

僕は今、訪問リハビリという仕事に携わっています。

毎週、同じ利用者さんのところに通い、
自分が最善と思えるようなものを提供し


それを幾度となく繰り返すうちに、
利用者さんのちょっとした変化にも、気付けるようになる

気付けば、自分のやり方をちょっと変えてみて、
合わなければ戻り、また少し変化させてみる


そういった反復行動と、試行錯誤を何度も繰り返すうちに、
元あったお手本としての型から、少しずつ離れることができて、
少しでもその人に合ったものを、提供できるようになっていきます。

つまり、
抽象的な論拠具体性によって確かめ
確かめるうちに、それは互いに少しずつ修正され
元あった型から、少しずつ離れることができ


やがてそれが、
自分流という形にも、変わっていく
のだと思います。


僕の仕事自体は、訪問リハ全体、或いは地域リハ全体から見れば、
ひとつの点にしか過ぎない
のでしょうが、

しかし、
何かを本当に知る、或いは知ろうとするとき

その行動は、
必ず、何らかの具体的な形となって現れようとするものだ、
ということは、確かなことです。

全体が、ひとつの具体的な自分の行動の中に凝縮され、
個別的でありながら全体的でもある


そういう、
一見すると矛盾するような形を通して、
初めて人は、抽象的な議論から抜け出して、
世界を見渡すことができる
のではないか

と思うのです。

そのために、
守破離という知の在り方が、
個別性から普遍性を探るための、重要なヒントを与えてくれる
僕には、そういうひとつの確信のようなものがあるのです。

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by hiro-ito55 | 2013-04-01 17:18 | 作業療法

作業療法士です。日頃考えていることを綴ります


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