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役割分担の人生

最近になって思うのは、この世界は階級社会でも、階層社会でも、ちょっと前によく言われた勝ち組負け組の世界でもなく、役割分担の世界なんだということです。

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確かに、持てる者と持たざる者、奪う者と奪われる者、そういった対立が世間や自分たちの身の回りにはあることも事実です。また、経済的な格差や貧困問題があることもまた、疑いのない事実だと思います。

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しかし、そういった側面で自分の世界を捉えてしまうと、人生ってとてもストレスフルな毎日になってしまうと思います。何かしら足りないものや不足しているものについつい目がとまってしまって、不平や不満で満たされてしまう、そんな毎日が幸せな毎日だとはけっして思えません。

僕らは小さい頃から、それこそ小学生の頃から、大きな目標を持って生きることに価値があることを繰り返し教えられてきました。目標や夢は大きく持ちなさい、なんてことは学校の先生がよく口にしていた言葉です。

でも、果たしてほんとうにそうでしょうか。目標や夢は大きければ大きいほど良いものなのでしょうか。

小さな夢や希望では、人生はダメなのでしょうか。まだ手に入れていないものを思うより、今あるものに目を向けてそれを大事にすることが、その人の毎日をこれかからも充実させてくれることだって、きっとあるはずです。

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僕は、この世界は役割分担の社会であると思っています。自分には自分の役割がある。と同時に、他人には他人の役割がある。交わっても交わらなくても、人それぞれの役割がただあるだけで、そこに優劣はないと思っていますし、もちろん、勝ち組や負け組もない。自分自身が感じる役割を果たしていくことが、生きる意味に繋がっていくのだと思います。

他人から見れば、自分のやっていることは実際にはつまらない、些細なことに見えるかもしれない。でも、そのことの意味を決めるのは、他人ではなく自分です。どんなに些細なことに見えても、そこに意味や価値を見出せるかどうかは、全て自分自身で決めていいことです。自分の人生なのですから。

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僕らが若い頃は、そういうことを口にすると、よくそれは自己満足だとか、独りよがりな考え方だとか言われたものです。今の若い人たちはどうだか分かりませんが、とにかく僕らは若い頃からそのように批判されてきたものです。

では、自分の役割を見つけるにはどうしたらいいか。それは今自分が実際にやっていることに向き合うことだと思います。

まだ手に入れていないことではなく、今持っているもの、自分にあるものに目を向けてみるだけでいい。

そうすれば、そこに自分なりの意味や価値があったことに気付くと思います。実はそれが一番大事なことで、それこそが自分の役割なのかもしれないのです。そして、それに気付くことができたら、今自分ができることを繰り返していけばいいのです。

繰り返すうちに、また違った見方やこうすればいいということが、自ずと実感できてくるものです。

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そこで振り返って頂きたいのは、今手に入れていないこと、例えば金持ちになりたいだとか、社長になりたいだとか、そういった欲望があったとしても、実際に今、自分が何かの拍子に社長になったところで、その役割を果たすことはできないということが実感できるということです。もちろん、そこで社長になれると実感できるのであれば、それがその人の役割になっていくのでしょう。
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自分の分相応を自覚する、役割分担の中に生きる、それは今自分が持っていることに向き合い続けることで得られるもので、そういったキーワードで自分の人生を形成していくことが、これからの世界を幸せに生き抜くための、大きな鍵となってくると思います。


# by hiro-ito55 | 2023-06-25 17:13 | 社会 | Comments(0)

押富敏恵さん、ありがとう。

本当に久しぶりの記事更新になってしまった。

そして、久しぶりの記事でこんなことを書くことになるとは、正直少し辛いけど、

僕の大切な人のことを、書かせてほしい。

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先日、昨年まで僕が訪問リハで担当していた方で、

敗血症と肺塞栓症を合併して、病院のベッドの上で静かに息を引き取りました。

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あまりに突然の訃報だったので、想像以上にショックが大きかった。

数週間経った今でも、上手く受け入れることができないでいます。

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でも先日、ようやくの思いで、お仏壇にお線香を上げさせて頂きました。

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一人残された母親と、その子の思い出をたくさんお話しすることができて、

少し落ち着くことはできたけど、

まだふいに、ひょっこりその子が姿を見せてくれるような気がして、

そんな気持ちがどうしても離れてくれなくて、涙がこみあげてきた。

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その子との出会いは、8年前のちょうど今頃でした。

僕と同じOTで、歳は僕より六つも若かった。

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看護師さんと同行訪問したとき、彼女はベッドの上で作りかけの編み物を手にしていた。

僕が部屋に入ると半身を起こし、こちらに顔を向けてペコリと会釈をする。

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綺麗な目と、屈託のない笑顔で看護師さんと話をする姿が印象的だった。

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敏恵ちゃん、

初めてあなたと会ったときのことは、今でもはっきりと覚えています。

あなたは、僕に向かってこう言いました。

「自分の力で座りたい」と。

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30歳を過ぎたばかりの女性の望みが、「自分の力で座ること」だなんて、

そのあまりにも残酷な現実と向き合っていることに、大きなショックを受けたことを、

今でも忘れることができません。

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それから7年の間、あなたの人生にとってみればほんのわずかな期間だったけど、

あなたとの時間を共有することができました。

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セラピストであり、障害者であること。

だからこそ見えてしまう苦しみがあり、気づきがあり、伝えることがあるということ。

あなたが僕に教えてくれた数々のことは、未だに僕にとっての宝物として、

心の中に残っています。

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そして僕は、それらを自分の仕事に生かそうと、自分にできることを探し続けています。

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あなたは優しい人でもありました。

暑い夏の日、一緒にキンキンに冷えたスイカを食べたことを覚えていますか。

冷房が嫌いなあなたが、汗だくになっている僕を見て、その労をねぎらってくれました。

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近くの公園で花火をしたときもそうでした。

知らない友人に囲まれて戸惑っている僕を見て、

一緒に線香花火で勝負をしようと誘ってくれましたね。

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今、あなたと過ごしたいろんな出来事、場面が思い浮かんできます。

そのときのあなたの笑顔は、一生忘れることができません。

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あなたの努力は、全ての出来事や存在、因果関係をあるがままに前向きに肯定し、

受け入れようとしたことです。

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それによって苦しみだけが多い人生を、懸命に切り開こうとした。

そのあなたの努力を、これからゆっくりと考えていこうと思っています。

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苦しいとき、悲しいとき、心が折れそうになったとき、

あなたとの歴史を思い出し、僕なりの人生を形にしていきたいと思っています。

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僕もあなたの一部です。

今までほんとうにありがとうございました。

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またいつか、どこかでお会いしましょう。

そのときは、またその笑顔を見せて下さい。

僕もきっと、笑顔であなたを迎えに行けると思っています。

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それまでどうか待っていて下さい。

僕もいっぱいお土産を持っていきますね。

               ・

ほんとうにありがとう、敏恵ちゃん。

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今はせめてこの言葉だけでも、

どうかあなたの下に届いてくれますように。

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# by hiro-ito55 | 2021-05-16 18:35 | 医療・福祉・対人支援 | Comments(0)

ケアマネは、OTの応用実践でもあると思う

一般的に、OTからケアマネに転職する人は少ない。

ほとんどのケアマネの基礎職が、介護職というのが現状だ。

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でも僕は、基本的にOTという職種は、ケアマネに向いていると感じている。

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OTは、対象者の関心事や価値に着目し、そこに焦点を当て、

対象者とともに、それをひとつの形にしていく専門職だと思うからだ。

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ケアマネジメントプロセスの根拠は、

対象者の生活課題を、自立に向けて支援していくことにある。

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一方、OTで関わることの意味は、

対象者の価値や関心事に関心を示し、それを達成できるよう支援することにある。

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両者とも、対象者の抱える課題に共感し、共有し得たものを支援し、

できることへと結び付けていくという点で共通している。

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違いがあるとすれば、それは対象者を支援できる範囲にあると思う。

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OTでは、リハ職からの観点による課題へのアプローチという切り口しかなかったものが、

ケアマネでは、介護保険制度をフルに活用する支援という、

多角的な関わり方へと変化する。

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いわば、OTでの関わり方をベースとした対人支援の応用実践が、ケアマネという仕事だと、

捉えることができるのだ。

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対人支援職としての、OTとケアマネの基本的な方向性は一致している。

あとは、自分が支援できる内容や範囲を広げることができるかどうかだと思うし、

ケアマネという仕事は、それを十分に可能にする職種だと思っている。

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給料が安いだとか、仕事が大変だろうだとか、そんなせこい話はなしにして、

これからケアマネを本気で目指すOTが少しでも増えてくれれば、

生涯に渡って対人支援という仕事を生業にすることの誇りについて、

もう少し前向きな意味づけや考察も可能になるのではないか...、

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そんなふうに思っているし、やがてそんな時代が来ることも願っている。

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# by hiro-ito55 | 2020-05-31 17:14 | 医療・福祉・対人支援 | Comments(0)

作業療法士です。日頃考えていることを綴ります。


by いとちゅー