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互いにマネジメントできる範囲内であること


回復期の病院から退院され、在宅でのサポートが開始された

身体的な回復がまだまだ見込める段階であるが、動作全般に介助が必要であったため、
寝返りから移乗までの基本動作能力の向上を図ること、
毎日の介助を担うご家族へのアドバイス、入浴介助を担当する看護師との連携など、
課題は多い。

在宅でリハや看護サービスが開始される場合、
ご家族が介助のやり方に不安や混乱を抱えているケースも珍しくなく、
この方の場合も、ご家族から具体的な介護の進め方について戸惑う気持ちが感じられた。

そのため、ご家族の負担を軽減できるよう、
退院後早期からデイサービスやデイケアなど、
社会資源活用に向けたご家族への助言も、同時進行の形で進められた。

しかし、
ご家族の混乱が僕らの予想以上であることが、段々と分かってきた。

具体的にどうしてよいか分からないことがあると、
訪問のたびに丁寧に説明することで一時は納得されるが、
翌訪問日には「実は...、」と、逆の見解を示されることもしばしば...。

或いは、寝返りから移乗まで、基本的な介助の方法について助言したことが、
その後全く実行されていないことも、度々見受けられるようになってきた。

実は、ご家族が直面していたのは、「分からないことが分からない」という状況で、
これが長引くと、在宅介護継続は難しくなる。

今のところ、在宅介護に対する意欲は高いため、
混乱や疲弊によって、限界を迎える事態だけは避けたい。

だから、早めのデイサービスやデイケアの利用を、と考えていたけれど、
たとえ寝たきりになったとしても構わないから、
自宅内で一日を過ごさせてあげたいという思いが、一番強いことも分かってきた。

その思いの根拠は、どうやら入院中の出来事に由来していたようだ。
午前と午後のリハビリ、医療的処置、清拭や入浴介助など、
病院では、一日に何人ものスタッフと関わり、過ごされてきた。

しかし、家族以外の、よく知らない多くの人と関わるという状況が、
本人の不安を助長させ、精神的に不安定な状態を作り出してしまった。

帰宅願望やせん妄、暴言や暴力、激しい感情の入れ替わり...。
退院と同時に、それらの症状はパッタリと無くなり、表情もとても穏やかになったが、
ご家族にとっては、その時の様子が非常にショックだった。

退院後は他人が関わることに対する不安や、拒絶する気持ちだけが残り、
デイサービスなど、不特定多数の人が出入りする場に行くことで、
再びパニックにならないか、非常に心配されていたのだ。


とも倒れを防ぐため、ご家族と本人が離れて過ごす時間も必要だとは思う。
ショートステイや一時入院など、今後予想されるであろう事態に備えて、
本人の抵抗を少しでも和らげるため、今のうちに外出慣れをしておく必要も、
あるのではないかとも思う。

そう考えれば、通所系サービスを利用しながら、支援を進めることは重要だと思う。

しかし、在宅支援は、
ご家族や本人も互いにマネジメントできる範囲内で、進められなければ続かない。

もし今後も、デイサービスなど自宅以外で過ごす時間を作ることが、
必ずしも彼らに、良い影響を齎すとは言えないと判断された場合、
今の生活パターンの範囲内で、最良の在り方を見つけていかなければならない。

何れにしろ、彼らの、分からないことが分からないという状況を、
まずは解消していかなければならない。

寝返り、起床、立ち上がり、移乗、車いす座位のポジショニングなど、
具体的に混乱しているものを、訪問の度にひとつひとつ確認し、
自信が持てるよう、根気よく伝えていくしかない。

そして、その上で見えてくる可能性があるのなら、それを待つしかない。

その人にとって、そしてご家族にとって、
最善であると言える在宅生活継続に向けての、具体的な助言や支援の形は...。

色んなことを考えさせられる。


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by hiro-ito55 | 2015-12-15 19:51 | 医療・福祉・対人支援 | Comments(0)

作業療法士です。日頃考えていることを綴ります。


by いとちゅー