考える生き方のヒント       ~今、伝えたいこと~

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それでも、世界との繋がりを持つために


人の感情や気持ちというものは不安定で、
言葉でその全てを言い尽くすことはできない

けれど、
言葉はそれにを与え、安定させることができる

僕らは言葉でもってしか、考えることはできないし、
言葉でもってしか、何かを伝えようとすることはできない

だから、
言い尽くせないものをできるだけしっかりと見定め
それを伝えようとするところに、言葉の持つ力があると思う。

言葉は、自分の気持ちを伝える道具にも成り得るし、
時に、人の共感を呼び起こす表現力にも成り得る

言葉は世界との繋がり
言葉を持つということは、世界との繋がりを持つということ

世界と繋がりを持つことができるから、人は安心することができる

だから、
どのような状況に置かれたときに人はもっとも絶望する
それは言葉を失ったときであろうと思う。

痛み苦しみを抱えてしまうことは、
ときに居た堪れないほどの孤独感を齎すけれど、

それを誰かに伝えることができるならば
本人が気付かなくてもそれは本当に孤独ではない

けれど
痛み苦しみを抱え、それを伝える力さえ持てなくなったとすれば...。

言葉を失うということは、
外界への道が閉ざされるということ


外界から全てが一方的に齎されるだけで、
自分にはそれを表現し、伝えることができない


そんなとき、
人は本当に絶望や孤独の淵に追いやられてしまうのではないだろうか


訪問リハで担当させて頂いている方の中に、ALSの方がいます。

呼吸機能が低下し、発声量も少なく
絞り出す言葉もたどたどしい

ジェスチャーや、文字盤などのコミュニケーションエイドを使って、
何かを伝えようとするけれど、
上手く伝わらないことの方が圧倒的に多い

訪問看護担当のNrs.からは、
体力も急激に失われつつあり、
週末に遊びに来た曾孫との交流を最後に、
車椅子に座る気力もなくなっている
、との報告を受けました。

食事も、今はベッド上で摂っています

主介護者奥さまは、ご本人の言わんとすることを聴き逃すまいと、
毎日付きっきりになって、傍で介護されています

僕も、
訪問中は、ご本人からのサインを出来るだけ漏らすまいとする


そんな周りの人の態度が、
却ってご本人の苛立ちを募らせてしまうこともあります。

そんなとき、
僕や周りの人は、溢れだしたご本人の感情に蓋をすることもできない


この人ね、クラシック音楽が好きなんですよ。』
 奥さまがボソッと僕に呟く

訪問リハ中に不謹慎とは思いながら、
部屋にあるオーディオのスイッチを入れ、
クラシック音楽を掛けさせて頂く

すると、
親指と人差し指で円を作り、僕らに一瞬『にこり』と笑いかける

自分から何かを伝えることができなくなりつつあるこの方にとって、
孤独感絶望感癒すのは
誰かと何かを共有する場と時間を、
誰かに作ってもらうことだけ
になりつつあります。

言葉を持つということは、世界との繋がりを持つということ。
言葉を失うということは、外界への道が閉ざされるということ。


絶望孤独の淵に追いやられてしまいそうなご本人を、
なんとか踏み止まらせているのは、
誰かと何かを共有する場と時間を持つため
家族という良き理解者が傍にいるということで、

ご本人にとってそれが
世界と自分を繋ぐために残された、たったひとつの道なのかもしれない


帰り際両手で握手をしながらまた来週も伺う旨をお伝えすると、
葉を出そうとして何度も失敗
最後は、笑いながら顔をくしゃくしゃにして泣いてしまう

奥さまからは、
週に一度来て下さることが、本人はとっても嬉しいみたいなんですよ。』
との言葉を頂く

正直、これから先この方たちに
僕が一体何をできるのか分からないけれど
せめて今、僕にできる精一杯を出せるようにしたいと思う

それができなければ、
僕には、ここに立つ資格すらない
ということ

それは忘れちゃいけないと思う




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by hiro-ito55 | 2013-03-17 20:45 | 医療・福祉・対人支援 | Comments(0)

作業療法士です。日頃考えていることを綴ります


by いとちゅー