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ニーズの架け橋


在宅で介護する場合に、
介護時間というものの区切りの無さに、
家族は悩まされることがあります。

また、末期癌などで、
余命数ヶ月とはっきりと診断された人を介護する場合ではなく、
認知症脳梗塞後遺症のある方たちを自宅で介護する、

そういった場合、
介護者は『これからいつまでこの介護が続くのだろう』という、
エンドレスに続くとも思えるような介護期間の不透明さに、
悩まされたりします。


先週、先々週と、
県内山間部の、訪問リハビリ同行させて頂く機会がありました。

真面目なご家族であればあるほど、
自分が親や夫を看なければ、という思いが強いのは当たり前で、

同行中、上記のような問題に悩まされているご家族にも、
何人かお会いさせて頂きました。

その方たちのお話は実に切実で、
中には、遠く遠方から週に何日か、泊まり込みでやってきて、
親の介護をしているご家族
もいらっしゃいました。

僕は、
もし、自分がこういうご家族やご本人を前にしたときに、
一人のリハ職として、何をすることができるのか

同行中、ずっとそれを考えていましたが、

問題は、
ご本人とそれに関わる人たちが、無理のない一日を過ごし、
それを継続させていくための、切っ掛け作りを提示していくこと
なのであり、

そのためには、訪問リハビリという枠組みを、
対人生活支援という少し大きな軸で捉えてみる


まずは、
そういった視点が必要とされるのではないかと感じます。

前に、支援ニーズには二種類あると書きました。

支援ニーズのうち『要求』に対しては、
日々、僕ら自身の持つ専門性を頼りにしていけば、
ある程度、これを満たしていくことは可能です。

一方、『必要性』に関しては、
ご本人やご家族が気付いていないニーズになるので、
負担そのものが表面化(意識化)されにくく、
ニーズの潜在性そのものが問題となる
わけですから、
これを引き出して、マネジメントしていく力が必要となります。

例えば、身内の介護に一所懸命なご家族であればあるほど、
近い将来、介護疲れなどマンパワーの限界予想されるにも拘らず、

在宅サービス入所サービスの利用という、
自分以外の他の力を借りることに対し消極的・否定的な場合があり、
ニーズの潜在性をどう気付かせ、
これをコントロールしていくかが、問題となってきます


このような場合、
ご家族やご本人の『なぜ?』という疑問抵抗感から、
最初に目的が明瞭化されたサービス導入するのは、
非常に難しいこと
予想されます。

ならば、
訪問時に、実際にご家族が介護疲れしていないか
或いは、完璧に介護しようと思ってはりきり過ぎていないか
などをチェックし、

ニーズの必要性をまずは明確にして、これを把握していく必要があります

ご本人とご家族の負担軽減の切っ掛け作りとして、
専門的な方法提示したり、助言したりしながら、

同時に、他の介護保険サービス導入への可能性を探っていくことで、
支援ニーズの必要性を満たしていく

これを、
ケアマネと連携しながら進めていくのも僕はアリだと思うし、

そういう意味において、
サービス利用の初期段階で、訪問リハビリ導入することには、
意味があるかもしれません


そして、それによって支援ニーズが満たされ、
その結果として、訪問リハビリサービスが必要なくなるのであれば、
リハ職としては、寧ろ嬉しいことだと思います。


優秀な職人Artisanは、
扱う素材の特性を、上手く引き出すような仕事をすると言われ、

優秀な芸術家Artistは、
扱う素材の個性に共感・共鳴するという、
そういう普遍的なところから仕事を始める
と言われますが、

僕がいつも思っているのは、
リハ職というのは、Artisanであると同時に、
Artistに近いものであってほしい
、ということです。

リハ職にとって、
職人の材料に当たるのが、支援ニーズであり、
これをどのように上手く引き出していくか、
というのがArtisan(職人)としての仕事
であるならば、

このニーズを、生活の中でどのように生かしていくのか
というのが、対『人』支援としての仕事です。

そのとき、その根幹に、人への共感や共鳴と、
ただこれに流されずに、しっかりと見定める専門性なくしては、
人として、人を支援していくことはできないであろう
というふうに考えています。

Artisanであると同時に、Artistに近いもの
リハ職にとってそれがどんな道であるのか

それを知るには、残念ながら今の時点では、
人間的にもOTとしても、自分はまだまだ勉強不足であることは、
はっきりとしています


いつも自分の非力さを痛感する、そんな毎日ですが、
できればこれからも、ずっと探し続けていきたい
そう思っています


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by hiro-ito55 | 2013-02-11 19:19 | 作業療法 | Comments(0)

作業療法士です。日頃考えていることを綴ります。


by いとちゅー