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知性というものについて


1.Did you know ?

少し前に、このような映像を見つけました。



あらゆるものがものすごいスピード生成されていき、
ごく短時間のうちに陳腐化していきます。

この映像を見て、皆さんはどのように感じるでしょうか。

僕は、知るということについて少し考えました。

この映像で紹介されているような、
あらゆる情報知識量的ものすごいスピード増え続け
それらが急速に陳腐化し続ける世界。

これに不安を感じるのは、
人間の知性というものについて、
少し誤解しているせいなのかもしれません。



2.知性の構造

理性情緒人間の知性ですが、
人間の理性を支えるのは情緒です。

それは、
理性が人間を支えているのではないということで、
僕らの不安は、
これが逆であると捉えているところから来るのではないか、
と思ったのです。


情緒とは、
自明のことを、自明のこととして捉えることのできる人間の知性です。

つまり、
当たり前のことを、当たり前のこととして捉える力のこと
なのですが、

物事を当たり前のこととして捉えるためには、
自分自身が納得するという力
働いていなければなりません。

例えば、
知識の上でいくら哲学や科学を知っていても、
それは情報として知っているということであって、
そのままでは、ただの観念です。

それを具体的な形で生かしていくことができなければ、
自分自身を支える力には、なっていかないでしょう。

そのため、そういったに変えていけるように、
情報を、自分自身の経験と照らし合わせていくことが必要なのです。

つまり、哲学や科学は、
自分自身が納得することができて初めて、生きた知性になるのだから、
情緒は、
その知性を支える大地のようなものでなくてはならない。

こういったことが知性の下地になければ、
理性だけで物事を知ろうとするし、
理性だけで自分を支えようとしてしまいます。

世間一般で言われる、いわゆるインテリと呼ばれる人たちが、
何かの拍子に一旦、タガが外れるとガタガタっと崩れてしまうのは、
理性を支える大地が貧弱だからです。



3.生きた知性にするには

情報や知識の量が、人間の知能を決めるのではないし、
いくら量的に情報や知識が増えていこうとも、
自分がそれを本当に良いものと感じられなければ
情報や知識をいくら知っていても、生きてこないのです。

例えば、
今はネットを通じて様々な画像を見たり、
情報を得たりすることができます。

僕は去年、三重県の松坂にある本居宣長鈴屋を見てきました。
鈴屋とは、宣長の終の棲家であり、講演場であり、
彼の一生涯の勉学の場でもあった場所です。

ネットでも鈴屋の画像や、宣長の情報は載っていますが、
実際に自分がそこに立ったとき、
この場所で彼が自分の生活のために薬の帳簿を付けたり、
聴衆に向けて講演をしたり、自分の勉学に励んだり悩んだりした

その200年前の彼と同じ場所にいるんだと感じたとき、
何とも言えない気持ちになりました。

ネットでどんなに鮮明な画像詳しい情報が載っていたとしても、
そういうリアリティーみたいなものは、
実際に見てみないと分からない

莫大な情報や知識をいくら持っていても、
それだけではそういう感動は得られないし、

また、そういうものを感じられなければ、
自分の中で、本当に生きた知性の種とはなっていかないのです。



4.正しいと認められることの方が大事

莫大な情報から正しい答を見つけるよりも、
それが本当に正しいと認められるということの方が、
人間の知性においては、実はとても大事なのです。

人間の知性の労力は、
そういったことに注がれるべきものなのです。

例えば、これは僕の経験ですが、
病院勤務をしていた新人OTの時、
運動学のことをもう少し詳しく知るために
僕は休み時間を利用して、休憩室の図書で調べものをしていました。

それを見て、一人の先輩から、
そんな理由づけはいらないから、そんなことよりも、
 うちは即戦力を求めているんだから、すぐに使えるものの方が大事で、
 そうでないものは、別に学ばなくてもいい
。』
と言われ、
ほとんど徒手的な写真や図解だけしか載っていないような
薄っぺらい本を、一冊渡されたことがあります。

これは随分ひどい話で、
自分のやることが本当に正しいかどうか
それを考えること問題じゃないから、
理由は知らなくても、
技術も人も、使えればそれでいいということです。

これでは、人も知性も、
それを行使する人間の責任感も、育ってはいきません


人間の知性を守るためには、
どういったことが本当に知るということなのか、ということを、
僕らはもう一度、
よくよく考えてみなければいけないと思うのですが、

そのことの重要性
現代では、だいぶ分かりにくくなってきています。

既に40年ほど前に、数学者の岡潔は、小林秀雄との対談
世界の知力がどんどん低下している』 
と、はっきり警鐘を鳴らしていますが、

爆発的に増え続ける情報から、正しい答を見つける
といった労力に、
人間の知性振り回されている現状を、このまま放っておくと、
人間の知性は、どんどん低下していく一方だと思います。







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by hiro-ito55 | 2012-04-26 02:49 | 哲学・考え方 | Comments(0)

作業療法士です。日頃考えていることを綴ります。


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