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介護・福祉のビジネス化

 『介護ロボット』 という言葉を聞いたことがあると思います。

介護ロボットと一口で言っても、
先髪ロボット食事介助ロボット歩行介助ロボットなど、
様々なロボットが研究・開発され、臨床的な試験も行われています。

今、この技術が世界中で注目を集めつつあり、市場も拡大しているようです。

実際、福祉先進国と言われているデンマークも、
積極的にこの市場に参入しようとする動きがあり、
日本の技術に注目してわざわざ見学に来られるそうです。

日本でも、この技術の国外への輸出を、
閉塞した経済の新たなビジネスチャンスとして捉え、
積極的に市場に参入しようとする動きもあるようです。



『高福祉社会』 といわれるデンマーク
しかし、国内では高齢社会を支えるために消費税は25%、
2010年現在で総人口の20%あまりを、65歳以上の高齢者が占めています。

そして、日本と同じでこれからも高齢者の比率は増加し、
福祉現場の人員不足と国民の負担は、増加し続けるものと予想されています。

このような現状を打破するために、注目されているのが、
介護ロボットに代表されるような『サイエンステクノロジー』です。

実際、認知症のお年寄りにリアルな動きをするネコのロボットを宛がったところ、
認知症の薬がほとんど必要なくなった、
という臨床報告も挙がっているそうです。


テクノロジーといえば、車椅子スライドボードなどもテクノロジーですが、
介護ロボットなどはこのような技術とは一線を画すもので、
サービスそれ自体を技術化しようとする、そのような技術です。

このような技術を普及させるための、そのための市場の掘り起しが、
世界規模で進みつつあります。

日本としては、経済の閉塞感を打破する新たなビジネス展開の場として、
介護・福祉サービスに狙いをつけ、
これを大規模に市場化していこうという動きが始まっています。

このような流れはこれからもどんどん加速していくでしょうし、
そのような動きもあっていいとは思います。

飽く迄、程度の問題でもあると思うので、
どこまでなら許容範囲であるのかは、真に微妙な問題ですが、

ただ、個人的な感想を述べさせていただけば、
介護や福祉の分野を、
あまりビジネスワードで語ったり、テクノロジーで括ったりしてほしくはない
(ちょっと今回は 『です・ます』口調はやめますね。)


まず、サイエンステクノロジーの大規模な導入が、
介護現場や国民の負担を軽減してくれるという期待は、
希望的観測の類である ということは申し上げておきたい。

それは、例えば一般的な企業をひとつ想像していただけると良いと思う。

例えば、機械化の導入で自動車から食器に至るまで、
大量に物を生産できるようになった。

確かに物は大量に作ることができる
しかしその分、生産に携わる人の労働は確実に減ったのである。

これが、物の生産という労働に限定されたものであればまだよいが、
機械化がサービスの分野にまで及べば、
サービスに携わっている人の労働も確実に減るのである。

そのくらいの計算は小学生にだってできる。

つまり、僕らの負担を減らし
人間を重労働から解放し、
にしてくれると期待されたサービステクノロジーは、

行き過ぎれば労働賃金の低下や、
僕らから労働の機会さえも奪うことに繋がるのは、
自明のことのような気がしてならない、
と申し上げたいのである。

物の生産大規模機械化して、
それでも賃金のアップ
雇用確保のために新たな人員を雇い続けようとして、

出口の見えない慢性的な不況に陥っている状況が、
今の日本の現状ではないのか。

それなのにそれを、福祉や介護の現場にも当て嵌めようというのだろうか。

これでは、経済や雇用問題の解決どころではないし、
何か暗澹たる思いに囚われてしまう。


そして、もうひとつは、
介護・福祉の世界をサイエンステクノロジーの枠で括ったり、
大規模なビジネス化を目指そうとしたりしている方々は、
一般企業でのサービスと、介護、福祉現場におけるサービスが、 
質的に異なる ということに気付いておられるのか、
ということである。

一般企業 (この際、家電量販店でも、ケイタイショップでもいいけど) 
におけるサービスは、
お客様の財布から如何に当店で、気持ちよくお金を(たくさん)出させるか、
あわよくばリピーターとなって繰り返しお金を払っていただけるか

がその主目的であり、そのためのサービス行使である。

だから、 『お辞儀は斜め45度まで』 なんていうマニュアルもあるし、
ひたすら 
『本日のお買い上げ、誠にありがとうございました!』 
と叫び続ける新入社員研修もあるのである。

全ては、お客様により多くのお金を出して頂くためである。

何もそれが、悪いと申し上げているのではない。
『そういうもの』 なのである。

けれど、
介護・福祉のサービスは、
お客様の財布の紐を緩めていただくためのものではない


相手を人間として尊重しているか、
つまり人間同士の最低限のマナーの問題なのである。

そこには 『この人にはちょっと気に入ってもらいたいな』 
という下心ぐらいは存在するかもしれないが、
僕らのサービスが、マネーによる対価の発現や等価交換という、
ギャランティーの場を、本質的に内包していないことだけは確かである。

それは、販売店で見られる 『うちで商品買ってもらえばそれでいい。』 
という、良くも悪くもドライなものではなく、
もっと 『人間臭いもの』 の筈である。

介護・福祉の世界をビジネスワードで語ったり、
サイエンステクノロジーで括ったりすれば、
この人間臭さというものはほとんど必要ではなくなり、
何か別のものに変質させられてしまうでしょう。

そのような姿が、介護や福祉と呼べるものなのか、
或いは介護・福祉の本質と、果たして相容れるものなのか、
よくよく考えてみなければならないのではないのか、

そのように思う。


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by hiro-ito55 | 2011-06-08 22:59 | 医療・福祉・対人支援 | Comments(0)

作業療法士です。日頃考えていることを綴ります


by いとちゅー